
リード獲得の課題を解決する:数と質の両面から考える営業の打ち手
「見込み客が足りない」という悩みは、営業の現場でとてもよく聞かれます。
ただ、その中身を確かめると、本当に数が足りない場合と、数はあるのに成約につながらない場合とが混ざっています。
どちらなのかによって、打つべき手はまったく変わります。
この記事では、リード(見込み客)の課題を「数」と「質」に分けて見分ける方法と、それぞれへの打ち手を、研究も交えながら整理します。
「数が足りない」と「質が合わない」は、症状が似ている
リードの課題を考えるとき、最初に確かめたいのは、問題がどこで起きているかです。
リードが成約に至るまでには、いくつかの段階があります。
問い合わせや名刺交換で接点ができ、話を聞いてもらえる商談になり、最後に契約に至る、という流れです。
営業の全体の流れについては、以前の記事(「営業プロセスの5段階:リード→成約→顧客化までの流れ」)で扱いました。
たとえば、ある営業担当者の1か月が、次のような数字だったとします(説明のための仮の数字です)。
新しく接点を持ったリードが40件、そのうち商談に進んだのが4件、成約が1件。
この人が「リードが足りない」と感じて、リードを80件に増やしたとしても、商談に進む割合が1割のままなら、増えるのは商談2〜3件ほどです。
一方で、商談に進む割合を2割に上げられれば、リードの数を変えなくても同じだけ商談が増えます。
このように、段階ごとの数字を並べてみると、問題が「入口の数」にあるのか、「入口から先へ進む割合」にあるのかが見えてきます。
数字を記録していないと、どちらの問題も「リードが足りない」という同じ感覚として表に出てくるのです。
数の問題か、質の問題かを見分ける3つの数字
では、具体的にどの数字を見ればよいのでしょうか。
最低限、次の3つを月ごとに記録しておくと、課題の所在が分かりやすくなります。
1つ目は、新しく接点を持ったリードの件数です。
2つ目は、そのうち商談(相手の課題や予算について具体的に話せた場)に進んだ割合です。
3つ目は、商談から成約に至った割合です。
1つ目の件数が少なく、2つ目と3つ目の割合は安定しているなら、それは数の問題です。
入口を広げる手を打てば、成果はおおむね比例して伸びると考えられます。
反対に、件数はそれなりにあるのに2つ目の割合が低いなら、質の問題である可能性が高くなります。
接点を持っている相手が、そもそも自社の商品を必要としていないか、今は検討する時期ではないのかもしれません。
この場合にリードの数を増やしても、商談に進まない相手が増えるだけで、営業の時間はむしろ奪われていきます。
正直に言えば、何割なら低いと言えるのか、という一般的な基準はありません。
業種や商品の価格、リードの入り方によって大きく変わるからです。
大切なのは他社と比べることではなく、自分の数字の推移を見て、どこが下がったのか、どこが伸び悩んでいるのかをつかむことです。
質の問題には、「誰に会うか」を絞り込む
質の問題に向き合うときに考えたいのは、相手にとって関係のない連絡が、ただ効果がないだけでは済まない、ということです。
それを示す調査があります。
調査会社のガートナー社は、2024年8〜9月にBtoBの購買担当者632人を対象に調査を行いました。
その結果、73%の購買担当者が、自社に関係のない営業連絡を送ってくる企業を、積極的に避けていると答えています。
同社のアナリストは、「下手なアプローチは、見込み客との関係を積極的に壊している」という趣旨のコメントを残しています。
同じ調査では、61%の購買担当者が、営業担当者を介さずに購入を進めたいと答えています。
ただし、すべての場面でそうなのではありません。
一般的な情報を集める段階では自分で調べることを好む一方で、その商品が自社に合っているかを見極める段階では、営業担当者の意見を求めたいという傾向も示されました。
この2つの結果を合わせると、質の高いリードとは、単に「買ってくれそうな相手」ではないことが分かります。
自社の商品が本当に役立つ課題を持っていて、その課題について営業担当者と話す意味がある相手、と言い換えられます。
その相手を見極めずに連絡の数だけを増やせば、73%の購買担当者が避けるような「関係のない連絡」を量産することになりかねません。
実際の見極めには、営業の現場で古くから使われている「BANT(バント)」という観点が役に立ちます。
Budget(予算)、Authority(決裁権)、Need(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字を取ったものです。
すべてがそろっていなくても構いませんが、どれが欠けているかを把握しておけば、今すぐ商談に進むべき相手か、時間をかけて関係を育てるべき相手かを分けられます。
決裁権を持つ人の見分け方については、以前の記事(「営業で決定権者を見分ける方法:本当の意思決定者に焦点を当てる」)で詳しく扱いました。
たとえば、Web制作の営業で、展示会で名刺交換した相手が30人いたとします。
そのうち「今のサイトから問い合わせが来ない」という課題をはっきり口にしたのは5人だけで、残りは情報収集のために来ていた人でした。
この5人にまず時間を使い、残りの25人には売り込みではなく役立つ情報を時々届ける。
そう分けるだけで、限られた時間の使い方が変わります。
見落とされがちな3つ目の原因:対応の遅さ
ここまで「数」と「質」を見てきましたが、実はもう1つ、見落とされやすい原因があります。
良いリードが来ているのに、対応が遅いために取り逃がしているケースです。
2011年、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に、ジェームズ・オールドロイド氏らによる研究が掲載されました。
研究チームはまず、アメリカの企業2,241社のWebサイトから、テスト用の問い合わせを送りました。
すると、1時間以内に返信した企業は37%にとどまり、24時間以上かかった企業が24%、まったく返信しなかった企業が23%ありました。
返信した企業の平均は42時間でした。
さらに、別の調査で125万件のリードを分析したところ、問い合わせから1時間以内に連絡を試みた企業は、1時間後に連絡した企業と比べて、リードを「見込みあり」と判断できる確率が7倍近く高かったといいます。
24時間以上待った企業と比べると、60倍以上の差がありました。
ここでの「見込みあり」とは、意思決定に関わる人と意味のある会話ができた状態を指しています。
ただし、この研究は慎重に読む必要があります。
対象はアメリカの企業で、Webからの問い合わせに限った調査です。
また、共著者の1人は、営業の対応を支援するサービスを提供する会社(InsideSales.com)の経営者でもあります。
日本の、しかも紹介や展示会が中心の営業に、7倍や60倍という数字をそのまま当てはめることはできません。
それでも、問い合わせをしてきた相手の関心が、時間とともに急速に冷めていくという傾向そのものは、多くの営業担当者の実感とも重なるのではないでしょうか。
問い合わせフォームの通知を1日1回まとめて確認している、担当者の割り振りに時間がかかっている、といった仕組みの問題で返信が遅れているなら、リードの数や質を変えるより先に、そこを直すほうが効果的かもしれません。
数の問題には、入口を増やす前に「来た人を逃さない」
数の問題だと分かった場合も、いきなり新しいリードを探しに行く前に、確かめておきたいことがあります。
すでに接点を持った相手を、取りこぼしていないかどうかです。
過去に名刺交換をしたまま連絡していない相手や、「今はいい」と言われたまま時間が経った相手は、新しく探すリードよりも、自社のことを知っている分だけ話が早いことがあります。
再びアプローチする時期の考え方は、以前の記事(「営業で「今はいい」と言われた時の対応:再アプローチのタイミング」)で扱いました。
そのうえで新しい入口を増やす場合は、人脈・紹介、展示会や交流会、リストへのアプローチなど、いくつかの方法を組み合わせることになります。
それぞれの具体的な進め方は、以前の記事(「見込み客(リード)の見つけ方:初心者が実践できる3つの方法」)にまとめています。
ここで大切なのは、入口を増やしたあとも、先ほどの3つの数字を記録し続けることです。
新しい入口から来たリードの商談化率が、これまでより大きく低いなら、数を追うあまり質が落ちているサインかもしれません。
おわりに
「リードが足りない」という言葉の裏には、数の問題、質の問題、そして対応の遅さという、少なくとも3つの原因が隠れています。
どれが当てはまるかは、段階ごとの数字を並べてみるまで分かりません。
感覚のまま「とにかく数を増やす」方向に走ると、関係のない連絡で見込み客に避けられ、営業の時間だけが減っていくこともあります。
まずは今月の数字を書き出して、どこで流れが細くなっているのかを確かめるところから始めてみてください。
参考にした情報
- James B. Oldroyd, Kristina McElheran, David Elkington「The Short Life of Online Sales Leads」Harvard Business Review, 2011年3月 https://hbr.org/2011/03/the-short-life-of-online-sales-leads
- Gartner「Gartner Sales Survey Finds 61% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Buying Experience」2025年6月25日 https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-06-25-gartner-sales-survey-finds-61-percent-of-b2b-buyers-prefer-a-rep-free-buying-experience