
営業で「今はいい」と言われた時の対応:再アプローチのタイミング
「今はいい」は、永遠の「NO」ではない
「今はいいです」と言われた瞬間、その商談は終わったものとして、心の中でそっと蓋をしてしまっていないでしょうか。
けれど、この言葉は多くの場合、「今、このタイミングでは」という条件付きの答えであって、未来永劫の拒絶ではありません。
問題は、断られた側の私たちが、いつ、どんな顔をして再び連絡すればいいのか、その感覚をなかなか掴めないことにあります。
早すぎれば煩わしがられ、かといって遠慮して間を空けすぎれば、相手の記憶から静かに消えていく。
このさじ加減にこそ、再アプローチの難しさが詰まっています。
なぜ「タイミング」がこれほど重要なのか:忘却曲線
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス氏は1880年代、無意味な音節を自ら記憶し、それがどれだけの速さで失われていくかを調べる、地道な実験を重ねました。
そこから導かれた「忘却曲線」によれば、人は学んだことの約半分を20分以内に忘れ、1日経つと記憶に残るのはおよそ3分の1、1ヶ月も経てば、元の情報のわずか5分の1しか残らないといいます。
これは英単語の暗記に限った話ではありません。
あなたの提案も、あなたという営業担当者の存在も、時間とともに同じ速度で、相手の記憶から薄れていっているのです。
だからこそ、間隔をただ空けるのではなく、1日後、3日後、1週間後というように、適切な間隔で繰り返し接点を持つことが、記憶への定着を助けるとされています。
「今はいい」と言われて何もしないまま放置することは、相手の記憶の中から、静かに自分の存在を消していく行為に等しいのかもしれません。
場面別の再アプローチの目安
とはいえ、あらゆる場面で同じ間隔が正解というわけではありません。
商談が停滞している、つまり検討はしてくれているものの返事が止まっている場合は、1〜2週間後を目安にリマインドの連絡を入れます。
まだ相手の記憶が新しいうちに、そっと背中を押すイメージです。
一方、明確に「今回は見送り」という結論が出た場合は、1〜2ヶ月ほど間を置いてから、新しい提案や情報を携えて再訪するのが自然です。
すぐに連絡してしまうと、断りを受け入れていないように映ってしまいますが、かといって長く放置しすぎると、忘却曲線が示す通り、記憶の彼方へ消えていってしまいます。
この1〜2ヶ月という間隔は、相手が一区切りついたと感じる時間と、こちらの存在が完全に忘れ去られる前の時間との、ちょうど狭間にあるのだと思います。
再アプローチで気をつけたいこと
タイミングと同じくらい大切なのが、再アプローチの中身です。
「その後いかがでしょうか」という、確認だけの連絡を繰り返しては、相手にとっては催促にしか感じられません。
以前の記事(「営業の事例紹介:顧客事例を説得に活かす活用法」)で扱った通り、再アプローチのたびに、何か新しい情報、たとえば似た業種の新しい事例や、季節に合わせた提案の切り口など、前回とは違う理由を持たせることが重要です。
「先日は失礼いたしました」で終わらせず、「実は先日お話しした件に近い事例が出てきたので、お伝えしたく」というように、連絡そのものに、相手にとっての新しい価値を添えることを心がけます。
今日からできること
「今はいい」と言われたまま止まっている商談を1つ思い出し、状況に応じて1〜2週間後か、1〜2ヶ月後か、目安の時期を決めてみてください。
その再アプローチで伝える「新しい理由」を、あらかじめ1つ用意しておいてください。
連絡の文面から、「その後いかがですか」という確認だけの言葉を減らし、相手にとっての新しい価値を一言添えてみてください。
まとめ
「今はいい」という言葉は、終わりではなく、次のタイミングまでの保留です。
忘却曲線が示す通り、時間はあなたの提案の記憶を静かに薄れさせていきますが、場面に応じた適切な間隔と、毎回持たせる新しい理由があれば、その記憶を保ち続けることができます。
焦らず、けれど手放さず、また会いに行くための理由を、次の1〜2週間、あるいは1〜2ヶ月のうちに、静かに準備しておいてください。
参考にした情報
- カオナビ「エビングハウスの忘却曲線とは?【わかりやすく解説】復習タイミング」https://www.kaonavi.jp/dictionary/ebbinghaus/
- 一般社団法人日本経営心理士協会「エビングハウスの忘却曲線」https://keiei-shinri.or.jp/word/%E3%82%A8%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%BF%98%E5%8D%B4%E6%9B%B2%E7%B7%9A/
- Sales Marker「営業フォロー(後追い営業)とは?放置はNG!正しい方法と重要性を解説」https://sales-marker.jp/report/sales-follow-up/
- アイマイテック「【重要】営業における後追い/フォローアップの6つのタイミング」https://www.aimytech.co.jp/grix/contents/salesfollowup