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営業活動の効率化:タイムマネジメントの視点
10月 6, 2026 ・ 営業サポート
SALES KNOWLEDGE

営業のタイムマネジメント:売る時間を増やすための3つの視点

営業の仕事は、顧客と話す時間だけでできているわけではありません。
資料作り、移動、社内の調整、報告書の作成。
気づけば1日が終わり、肝心の商談や提案の準備に使えた時間はわずかだった、ということも少なくありません。
この記事では、営業の時間が足りなくなる原因を3つの視点から研究とともに確かめ、売る時間を守るための考え方を整理します。

営業担当者が「売る」ことに使えている時間は、3割に満たない

営業担当者は、実際にどれくらいの時間を販売に使えているのでしょうか。
それを調べたのが、営業支援ツールを提供するSalesforce社の調査です。

同社は2022年8〜9月に、38か国の営業担当者など7,775人を対象に調査を行いました。
その結果、営業担当者が実際に販売に使っている時間は、勤務時間の28%にとどまっていました。
残りの72%は、商談の管理やデータの入力など、販売以外の業務に使われていたのです。

この調査を行ったのは、営業支援ツールを販売している会社です。
「販売以外の業務が多い」という結果は、自社製品の必要性を示す材料にもなるため、数字はある程度割り引いて受け止める必要があります。
また、調査対象には大企業の営業担当者も多く含まれており、個人や小さな事業者の働き方とは事情が違うかもしれません。

それでも、「売る時間が思ったより少ない」という感覚は、多くの営業担当者に共通するものではないでしょうか。
まず試してみたいのは、自分の1週間の時間の使い方を、実際に記録してみることです。
顧客と話した時間、提案の準備をした時間、移動、社内の作業。
感覚ではなく記録で見ると、販売以外の業務がどこに集まっているかがはっきりします。

たとえば記録してみて、毎日の報告書作りに1時間かかっていると分かったとします。
書式を決めておく、商談の直後にその場で要点だけメモしておく、といった工夫で30分に縮められれば、1週間で2時間半を顧客のために使えるようになります。

人は、作業にかかる時間を楽観的に見積もる

時間が足りなくなる2つ目の原因は、予定の立て方そのものにあります。
人は、作業にかかる時間を短く見積もりすぎる傾向があるのです。

1994年、カナダの心理学者ロジャー・ビューラー氏らは、この傾向を確かめる研究を発表しました。
卒業論文の仕上げに取り組んでいる大学生37人に、論文をいつ提出できるかを、できるだけ正確に予想してもらったのです。
その後、実際の提出日を記録して、予想と比べました。

学生たちの予想は、平均で33.9日後でした。
ところが、実際に提出したのは平均55.5日後でした。
予想した日までに提出できた学生は、29.7%にとどまりました。
さらに驚くのは、「すべてが最悪に進んだ場合」の予想日を聞いたときでさえ、その日までに提出できたのは48.7%と、半数に届かなかったことです。

ビューラー氏らは、この傾向を「計画錯誤」と呼んでいます。
人は予定を立てるとき、その作業がうまく進む場面を思い描き、過去に同じような作業で時間がかかった経験を、あまり考慮に入れないのだといいます。

営業の仕事も、この傾向から逃れられません。
提案書は2時間で作れるつもりが、資料集めや社内の確認で1日かかる。
訪問は1時間のつもりが、移動や待ち時間を含めると半日になる。
こうした見積もりの甘さが重なると、予定どおりに進まない日が続き、後回しになるのは、たいてい急がないけれど大切な仕事です。

対策として役に立つのは、自分の過去の実績を基準にすることです。
先ほどの時間の記録があれば、「提案書1件にかかった実際の時間」が分かります。
次の予定は、その実績をもとに組む。
楽観的な見込みではなく、過去の自分のデータに頼ることで、計画錯誤の影響を小さくできます。

「いつ・どこでやるか」を決めると、実行される確率が上がる

3つ目の原因は、やるべきことが分かっていても、手をつけるきっかけがないまま後回しになることです。
これに対して、実行の確率を高める方法を示したのが、ドイツの心理学者ペーター・ゴルヴィツァー氏らの研究です。

1997年に発表された研究では、クリスマス休暇の前に、大学生に1つの課題を出しました。
クリスマス・イブの午後と夜をどう過ごしたかについて、休暇中の2日間のうちにレポートを書いて送ってほしい、というものです。
このとき、半分の学生には、休暇中のいつ、どこでレポートを書き始めるかを、あらかじめ具体的に決めてもらいました。
「次の日の朝食のすぐ後に、居間の静かな一角で」というようにです。
もう半分の学生には、そうした指示はしませんでした。

その結果、期限内にレポートを書いた学生の割合は、「いつ・どこで」を決めた学生では71%でした。
決めなかった学生では32%にとどまりました。

ゴルヴィツァー氏は、この「いつ・どこでやるかを決めておくこと」を「実行意図」と呼んでいます。
この研究は、分析対象が36人と小さなものでした。
ただ、その後に同氏らが行った多くの研究のまとめでも、同じ方向の効果が繰り返し確認されています。

営業の仕事に置き換えると、「今週中に過去の顧客へ連絡する」という目標だけでは、目の前の急ぎの仕事に押し流されがちです。
「火曜日の朝9時、事務所に着いたらまず3件連絡する」と決めておけば、その時間が来たときに、迷わず手をつけられます。
とくに、顧客との関係を育てるための連絡や、提案の質を上げるための準備のように、急ぎではないけれど成果を左右する仕事ほど、この方法が効果を発揮します。

時間は「増やす」より「守る」

3つの研究を並べると、営業の時間管理で大切なのは、新しい時間を生み出すことより、今ある時間を守ることだと分かります。

販売以外の業務を記録して減らす。
過去の実績をもとに、無理のない予定を組む。
大切な仕事に、いつ・どこで取り組むかを決めておく。
どれも特別な道具を必要としない、地味な工夫です。

正直なところ、時間の使い方は、一度決めたらその通りに続くものではありません。
急な依頼やトラブルで、予定はたびたび崩れます。
それでも、自分の時間がどこに消えているのかを知っているかどうかで、崩れたあとの立て直し方は大きく変わります。

なお、限られた時間をどの顧客に使うかという優先順位の考え方については、以前の記事(「営業戦略の立て方:個社別・顧客別アプローチの設計」)で扱いました。
時間の使い方と、時間を使う相手の選び方は、両方そろって初めて成果につながります。

おわりに

忙しい日が続くと、「時間が足りない」という感覚だけが残り、その原因を確かめる余裕もなくなりがちです。
まずは1週間、自分の時間の使い方を記録してみてください。
売る時間を増やす最初の一歩は、自分の時間がどこへ流れているかを知ることなのだと思います。

参考にした情報

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