本文へスキップ
1on1で部下と向き合う:営業マネジメントの基本
10月 7, 2026 ・ 営業サポート
SALES KNOWLEDGE

営業の1on1ミーティング:部下の成果を伸ばす上司の関わり方

上司と部下が1対1で定期的に話す「1on1ミーティング」は、多くの職場で取り入れられるようになりました。
ただ、時間を取って話してはいるものの、それが部下の成果につながっているのか、手応えを持てていない上司も多いのではないでしょうか。
研究をたどると、1on1は、やり方次第で成果を伸ばすことも、かえって下げることもあると分かってきます。
この記事では、3つの研究をもとに、営業の1on1で上司が意識したいことを整理します。

部下の意欲は、上司によって大きく変わる

1on1の話に入る前に、そもそも上司の関わりが、部下にどれほど影響するのかを確かめておきます。

調査会社のGallup社は、2015年に発表した報告の中で、チームごとの「仕事への意欲(エンゲージメント)」の差のうち、少なくとも70%は上司によって説明できると推定しています。
同社がこの20年ほどの間に、2,700万人の従業員、250万以上の職場単位を調べてきた結果にもとづく推定です。
同じ会社の同じような仕事でも、上司によってチームの意欲が大きく違う、ということです。

この数字は、仕事への意欲についてのもので、営業成績そのものについてのものではありません。
また、Gallup社は組織づくりのコンサルティングを事業にしている会社でもあります。
それでも、部下が働く環境を形づくるうえで、直属の上司の存在が大きいことは、多くの人の実感とも重なるはずです。

その上司が、部下と1対1で向き合う時間が1on1です。
だからこそ、その時間の使い方が問われます。

1on1の回数を増やすだけでは、成果は上がらない

では、上司が部下と向き合う時間を増やせば、成果は上がるのでしょうか。
これを営業の現場で確かめたのが、2016年にジェイソン・ダーリング氏らが発表した研究です。

研究チームは、ある製薬会社の営業担当者1,246人と、その上司が率いる136のチームを1年間追いました。
上司が部下をコーチングする「うまさ」は、研修の場で専門家が評価しました。
部下をコーチングした「回数」も記録し、それぞれが部下の年間の売上目標の達成度とどう関係するかを調べたのです。

その結果、コーチングがうまい上司のもとでは、部下の売上目標の達成度が高くなっていました。
その理由の一部は、部下が「自分は何をすべきか」をはっきり理解できていたこと、つまり役割の明確さにありました。

一方で、回数については意外な結果が出ています。
コーチングのうまさが低い上司の場合、コーチングの回数が多いほど、部下の目標達成度はかえって下がっていたのです。
うまくない関わりを何度も繰り返すことは、関わらないよりも悪い結果につながることがある、ということです。

この研究は、1つの製薬会社を対象にしたもので、すべての営業組織に同じ結果が当てはまるとは限りません。
それでも、「1on1は回数を重ねれば効果が出る」という前提には、立ち止まる理由があります。
まず問うべきは、1on1の時間が、部下にとって「何をすべきかが、はっきりする時間」になっているかどうかなのです。

フィードバックは、3回に1回以上、逆効果になる

1on1でよく行われるのが、部下の仕事ぶりへのフィードバックです。
しかし、フィードバックにも、成果を下げてしまう場合があります。

1996年、心理学者のアブラハム・クルーガー氏とアンジェロ・デニシ氏は、フィードバックが成果に与える影響を調べた研究を幅広く集めて分析しました。
効果の測定607件、観察数にして2万3,663件にのぼる分析です。

その結果、フィードバックは平均すると成果を高めていました。
ところが、全体の3分の1を超えるケースでは、フィードバックによって、かえって成果が下がっていたのです。

クルーガー氏らは、その分かれ目を、フィードバックが相手の注意をどこに向けるかで説明しています。
「この作業のこの部分をこう変えるとよい」というように、注意が仕事そのものに向くフィードバックは、成果を高めやすい。
反対に、「自分はできない人間だと思われている」というように、注意が自分自身に向いてしまうフィードバックは、成果を下げやすいのです。

営業の1on1に置き換えてみます。
「最近、成約が少ないね」という言葉は、事実を伝えているつもりでも、部下の注意を「自分の評価」に向けてしまいがちです。
「先週の3件の商談、どれも価格の話で止まっていたね。次は、価格の前に導入後の効果を伝えてみようか」と伝えれば、注意は次の商談での具体的な行動に向きます。
同じ課題を伝えるにしても、その言葉が部下の注意をどこに向けるかで、結果は変わるのです。

1on1で話したいのは、「次に何をするか」

ここまでの研究を合わせると、営業の1on1で中心に据えたいことが見えてきます。
部下が、自分は何をすべきかをはっきり理解し、次の行動に注意を向けられるようにすることです。

具体的には、次の3つを確かめる時間にするとよいでしょう。
今いちばん力を入れるべき顧客や案件はどれか。
その案件で、次に何をするか。
それを進めるうえで、つまずいていることや、上司に手伝ってほしいことは何か。

ここで大切なのは、話の中心を部下に置くことです。
上司が一方的に指示や評価を伝える場になると、1on1は部下にとって「評価される時間」になり、クルーガー氏らの言う、注意が自分自身に向いてしまう状態に近づきます。
部下が話したいことを持ち寄り、上司はそれを整理する手伝いをする。
そのほうが、部下にとって「何をすべきかが、はっきりする時間」になりやすいはずです。

部下がつまずきや失敗を話しやすい雰囲気づくりについては、以前の記事(「営業で怒られるのは成長の機会:失敗から学ぶマインド」)で扱いました。
また、部下と一緒に目標を立てるときの考え方は、以前の記事(「営業のモチベーション維持:目標設定とごほうびの仕組み」)が参考になります。

回数より、1回ごとの質を

1on1を始めると、「毎週30分」のように、回数や時間を決めることから入りがちです。
決まった時間があること自体は、部下が相談しやすくなるという意味で悪いことではありません。

ただ、ダーリング氏らの研究を思い出すと、回数を守ることが目的になってはいけないことが分かります。
話すことがない週に、形だけ集まって近況を聞き、なんとなく励まして終わる。
それが続くと、1on1は部下にとって、営業に使えたはずの時間を取られるだけの場になりかねません。

正直に言えば、上司の側も、毎回うまく関われるとは限りません。
それでも、1回ごとに「今日の1on1で、部下の次の行動は少しでもはっきりしたか」を振り返るだけで、関わり方は少しずつ変わっていきます。
営業成績が良かった人が、そのまま部下を育てるのがうまいとは限らないという話は、以前の記事(「営業職のキャリア設計:管理職へのステップアップ戦略」)でも触れました。
1on1のうまさは、才能というより、振り返りながら身につけていく技術なのだと思います。

おわりに

1on1は、上司と部下が1対1で向き合える、貴重な時間です。
ただ、その時間は、使い方によって、部下の成果を伸ばすことも、かえって下げることもあります。
回数よりも中身、評価よりも次の行動、上司の話より部下の話。
部下が1on1を終えたときに、「次に何をすればよいかが分かった」と感じられているか。
それが、1on1がうまくいっているかどうかを確かめる、いちばん分かりやすい目安なのかもしれません。

参考にした情報

この記事を共有する
← 営業ノウハウ勉強メモの記事一覧に戻る
FREE CONSULTATION

記事の内容についてのご相談も承ります

映像制作・ホームページ制作・営業支援について、お気軽にお問い合わせください。

  1. 01 現状のヒアリング オンライン30分ほどで、目的・ご予算・時期をお聞きします。
  2. 02 概算お見積りのご提示 内容に合わせた進め方と、費用の目安をご提案します。
  3. 03 ご検討 そのままお持ち帰りいただけます。しつこい営業のご連絡はいたしません。
無料で相談する LINEで相談する