
営業プレゼンテーション:資料を使わずに商品価値を伝える方法
資料がなくても「伝わる」プレゼンはできる
商談の場で、資料やパンフレットを開く前に一言で価値を説明しなければならない場面は多くあります。
エレベーターで乗り合わせた相手、立ち話、電話越しの短いやり取りなど、資料を広げられない状況は珍しくありません。
以前の記事(「営業ヒアリングスキル:顧客の本当のニーズを引き出す質問術」)で扱ったSPIN話法で顧客のニーズを引き出せたとしても、それに応える説明が資料頼みでは、いざという場面で力を発揮できません。
今回は、資料に頼らず、言葉だけで価値を伝えるための型を紹介します。
FABE:特徴・利点・利益・証拠を順番に話す
営業トークを組み立てる代表的なフレームワークに「FABE分析」があります。
これは、Feature(特徴)・Advantage(利点)・Benefit(利益)・Evidence(証拠)という4つの要素を、この順番で話す型です。
Feature(特徴)は、商品やサービスそのものの特徴です。
「このツールは、入力から3クリックで見積書が作成できます」というような、事実としての特徴を指します。
Advantage(利点)は、その特徴が一般的に見てどう優れているかです。
「多くのツールは入力に5ステップかかりますが、これは3クリックで完了します」というように、比較の視点で示します。
Benefit(利益)は、その利点が顧客自身にとって何をもたらすかです。
「その結果、見積書作成にかかっていた時間を、他の業務に使えるようになります」というように、顧客の生活・業務にとっての意味に変換します。
Evidence(証拠)は、ここまでの話を裏付ける実績やデータです。
「実際に導入した企業様では、見積書作成の時間が月に◯時間削減されました」というように、具体的な裏付けを添えます。
顧客が本当に知りたいのは特徴(Feature)そのものではなく、その先にある利益(Benefit)です。
特徴の説明だけで終わらせず、必ず「それが顧客にとって何を意味するか」まで言い切ることが、資料なしで伝える際の要になります。
ストーリーで語ると、記憶に残りやすい
スタンフォード大学経営大学院のジェニファー・アーカー教授は、事実やデータだけを伝えるより、物語(ストーリー)を交えて伝えた方が、聞き手の記憶に最大22倍残りやすいと紹介しています。
これは、数字や特徴の羅列よりも、「実際にこういう会社様が、こういう状況で困っていて、こう変わった」という具体的な物語の方が、聞き手の頭の中に残りやすいという考え方です。
FABEのEvidence(証拠)の部分を、単なる数値の提示で終わらせず、「実際にあったお客様の状況」として一言添えるだけで、記憶に残りやすさは大きく変わります。
たとえば「削減率30%です」で終わらせるのではなく、「毎晩遅くまで見積書を作っていた担当の方が、定時で帰れるようになったとおっしゃっていました」というように、具体的な情景を一言加えます。
資料なしで話すときに気をつけたいこと
資料がない分、詰め込みすぎないことが重要です。
伝えたい特徴を3つも4つも並べるより、相手の課題に最も関係する1つに絞り込み、FABEの型で深く伝える方が、記憶にも理解にも残ります。
専門用語や社内でしか通じない略称は、資料であれば注釈を添えられますが、口頭だけだと相手を置き去りにしてしまうため、特に意識して避けます。
資料なしで説明した後は、「ここまでで気になる点はありますか」と一言確認を挟むと、置き去りになっていないかを確認できます。
今日からできること
自社の商品・サービスについて、FABEの4項目を紙に書き出してみてください。
Evidence(証拠)の部分を、数字だけでなく「どんなお客様が、どう変わったか」という一文に書き換えてみてください。
次に資料なしで説明する場面があれば、特徴を1つに絞り込んで、このFABEの順番で話してみてください。
まとめ
資料に頼らず価値を伝えるには、FABE(特徴・利点・利益・証拠)という順番の型と、証拠をストーリーとして語る工夫が有効です。
特徴の説明で終わらせず、必ず「顧客にとっての利益」まで言い切ること。
この意識だけで、資料なしの場面での伝わり方は大きく変わります。
参考にした情報
- Tsquare「『お客様への提案力』を劇的に高めるFABとは?受注率を上げる基本フレームを徹底解説」https://tsquare-ltd.com/1027/
- SalesZine「FABとは?営業や提案、資料作成まで使える基本のフレームワーク」https://saleszine.jp/article/detail/4253
- note(海老原氏)「FABE分析とは:提案、商品設計フレームワーク」https://note.com/hitoshi_ebihara/n/naa5c010c83a7
- note(斎藤潤一氏)「自分ブランドのつくり方。ストーリーで伝えると効果は22倍。スタンフォード大学の研究結果を参考に」https://note.com/junichisaito/n/nf7d9850dc079