
営業傾聴スキルの磨き方:相手の話を引き出す5つのコツ
「質問」の次は「聴き方」
以前の記事(「営業ヒアリングスキル:顧客の本当のニーズを引き出す質問術」)では、何を質問するかというSPIN話法を扱いました。
どれだけ良い質問をしても、その答えの引き出し方・受け止め方が雑だと、顧客は本音を話してくれません。
今回は、質問した後の「聴く技術」、いわゆる傾聴(けいちょう)について、心理学の理論と実践的なテクニックの両面から整理します。
①傾聴の土台:ロジャーズの3原則
傾聴という考え方のベースになっているのが、心理学者カール・ロジャーズ氏が提唱した3つの原則です。
1つ目は「共感的理解」で、相手の立場に立ち、相手の気持ちに寄り添いながら理解しようとする姿勢です。
2つ目は「無条件の肯定的関心」で、良い・悪い、好き・嫌いといった評価を挟まずに、まずはそのまま話を受け止める姿勢です。
3つ目は「自己一致」で、聞き手自身も誠実であること、話が分かりにくいときは分かったふりをせず、正直に確認し直すことです。
この3つは、この後紹介するテクニックすべての前提になる「姿勢」であり、テクニックだけを真似ても、この土台がなければ表面的な傾聴になってしまいます。
②相槌・うなずきで「聞いている」ことを示す
相手が話している間、うなずきや「なるほど」「そうなんですね」といった相槌を挟むことは、単純ですが効果の大きい技術です。
言葉を発していなくても、相槌や表情から「ちゃんと聞いてもらえている」と感じられると、相手は安心してさらに詳しく話してくれるようになります。
逆に、無表情・無反応のまま聞いていると、話している側は不安になり、話す内容を短く切り上げてしまいがちです。
③言い換え・要約で理解を確認する
相手が話した内容を、自分の言葉で言い換えて確認する技術です。
「つまり、今のやり方だと確認作業に時間がかかっている、ということですね」というように、要約して返します。
この技術には2つの効果があります。
1つは、こちらの理解が合っているかを確認できること、もう1つは、相手自身が「自分が言いたかったことはこれだ」と、話しながら考えを整理できることです。
④ミラーリング:相手の言葉をそのまま繰り返す
元FBI人質交渉人のクリス・ヴォス氏が、著書『逆転交渉術』(2016年)の中で紹介している技術に「ミラーリング」があります。
やり方はシンプルで、相手が話した最後の2〜3語をそのまま繰り返すだけです。
たとえば相手が「対応が遅くて困っているんです」と言ったら、「対応が遅くて、困っている」とそのまま返します。
これだけで、相手は「もっと詳しく話そう」という気持ちになり、自発的に話を続けてくれることが、交渉の現場で確認されています。
③の「言い換え」が内容を要約する技術なのに対し、ミラーリングは相手の言葉をそのまま使う点が異なり、より軽い相槌代わりとして、会話の随所で使いやすい技術です。
⑤沈黙を恐れない
相手が話し終えた直後、すぐに次の質問やコメントを挟まず、あえて2〜3秒の間を空ける技術です。
沈黙を気まずく感じて、こちらから話し始めてしまう営業担当者は少なくありませんが、その沈黙こそが、相手が「もう少し話そうか」と考える時間になります。
特に、以前の記事で扱った示唆質問(問題を放置した場合の影響を尋ねる質問)の後は、相手が考えを整理する時間が必要なため、意識して沈黙を作ることが効果的です。
今日からできること
次の商談で、相手が話している間、相槌の種類を意識して増やしてみてください。
相手の話が一区切りついたところで、要約またはミラーリングのどちらかを1回は使ってみてください。
相手の話が終わった直後、すぐに話し始めず、心の中で2秒数えてから話し始めてみてください。
まとめ
傾聴は、ロジャーズの3原則という「姿勢」を土台に、相槌・言い換え・ミラーリング・沈黙という具体的な技術を重ねることで磨かれます。
どれも特別な才能ではなく、意識すれば今日の商談から使える技術です。
以前の記事で扱った質問術とあわせて使うことで、顧客の本音により近づけるようになります。
参考にした情報
- 一般社団法人日本経営心理士協会「積極的傾聴法(アクティブリスニング)」https://keiei-shinri.or.jp/word/%E7%A9%8D%E6%A5%B5%E7%9A%84%E5%82%BE%E8%81%B4%E6%B3%95%EF%BC%88%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%89/
- Lively Journal「アクティブリスニングとは|カール・ロジャーズと三原則の徹底解説」https://about.lively-talk.com/journal/expert/active_listening
- flier「逆転交渉術 / まずは『ノー』を引き出せ」(クリス・ヴォス著、要約)https://www.flierinc.com/summary/1617
- PRESIDENT Online「FBI交渉術『まず”復唱”して3秒沈黙』相手の思惑を探り、返答を考える」https://president.jp/articles/-/27738