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営業での長期関係構築:1回の商談ではなく顧客化を目指す戦略
9月 26, 2026 ・ 営業サポート
SALES KNOWLEDGE

営業での長期関係構築:1回の商談ではなく顧客化を目指す戦略

「顧客離れを5%減らすと、利益が25%増える」という言葉の正体

営業やマーケティングの世界で、一度は目にしたことがあるかもしれない数字があります。

「顧客離れをわずか5%改善するだけで、利益は25%から、業種によっては95%も増える」。

1990年、コンサルタントのフレデリック・ライクヘルド氏とハーバード・ビジネススクールのW・アール・サッサー教授が、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表し、以来30年以上、無数のビジネス書やセミナーで引用され続けてきた数字です。

ただ、正直に書いておきたいことがあります。

この数字は、実際の企業データを大規模に調査して導かれたものではなく、思考実験から生まれたものだということです。

たとえばクレジットカード会社が毎年顧客の10%を失っているとすると、顧客が平均10年間取引を続ける計算になります。

その離脱率を5%まで下げられれば、平均の取引期間は単純計算で20年に延びる、という発想です。

さらに、この「5%」が、離脱率そのものを5%下げるという意味なのか、それとも10%から5%へ、つまり離脱率を半分にするという意味なのか、解釈にも曖昧さが残ることが、後年の研究者から指摘されています。

ライクヘルド氏自身の共同研究者でさえ、この計算の一部に疑問を呈したことがありました。

それでもなお、この数字がここまで語り継がれてきたのは、数字の厳密さ以上に、「既存の顧客を大切にすることの価値」という、方向性そのものが、多くの経営者・営業担当者の実感と一致していたからなのだと思います。

なぜ、既存顧客はそれほど「割に合う」のか

数字の正確さには留保をつけるとしても、既存顧客との関係を続けることが、新規開拓より効率的である理由そのものは、いくつかの具体的な形で説明できます。

1つ目は、単純に営業にかかる労力です。
初対面の相手に一から信頼を築く手間と比べ、すでに信頼関係のある相手への提案は、圧倒的に少ない労力で済みます。

2つ目は、価格への抵抗の弱さです。
実績を積み重ねた相手には、多少価格が高くても、それに見合う信頼があると感じてもらいやすく、値引き競争に巻き込まれにくくなります。

3つ目は、紹介という副産物です。
満足した既存顧客は、時に頼んでもいないのに、知人や取引先を紹介してくれることがあります。
これは、新規開拓のための広告費や営業活動では、なかなか再現できない種類の成果です。

1件1件は地味でも、これらが積み重なっていくことで、既存顧客との関係は、数字以上の実感を持って「割に合う」ものになっていきます。

1回の商談で終わらせないために、何を変えるか

長期的な関係を前提にすると、商談そのものの捉え方が変わってきます。

納品や契約の完了を「ゴール」として扱っているうちは、その後の関係は自然には続きません。

以前の記事(「営業後のフォローアップが結果を左右する理由と実例」)で扱った通り、商談が終わった後の一手間こそが、関係を継続させるかどうかの分かれ目になります。

具体的には、納品して終わりにせず、しばらく経ってから「その後、いかがですか」と、押し売りにならない範囲で様子を伺う連絡を入れること。

相手の業界や状況に変化がありそうなタイミングで、以前の記事で扱った通り、新しい価値のある情報を携えて、再び顔を出すこと。

そして何より、1回の契約金額の大きさよりも、この先何年この関係が続くかという視点で、目の前の商談を見る癖をつけることです。

正直なところ、目の前の新規開拓に追われていると、こうした地道な積み重ねは、つい後回しにされがちです。

けれど、5%という数字の正確さがどうであれ、既存の関係を軽んじることの機会損失は、思っている以上に大きいのだと思います。

今日からできること

過去に取引のあった顧客のリストを見返し、最後に連絡を取ったのがいつだったか、確認してみてください。

その中から1件、押し売りにならない範囲で、近況を伺う連絡を送ってみてください。

新しい商談に臨むとき、「この1回」ではなく「この先の数年」という視点で、相手との関係を思い描いてみてください。

まとめ

「顧客離れを5%減らせば利益が25%増える」という数字は、厳密な調査というより、方向性を示す思考実験から生まれたものでした。

それでも、既存顧客との関係が、新規開拓よりも効率よく成果につながりやすいという実感そのものは、多くの現場で裏付けられています。

1回の商談をゴールにするか、その先に続く関係の入り口として捉えるか。

その視点の違いが、数字には表れにくい形で、長い目で見た成果を分けていくのだと思います。

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