
風景・空撮の基本:雰囲気を伝える撮り方
これまでの記事で、構図やショットサイズ、人物撮影のコツについて取り上げてきました。
今回は、風景撮影を中心に、お店の雰囲気やロケーションを伝えるための考え方を解説します。
風景撮影は、お店のロケーションを伝えるのに効果的
料理やスタッフのコメントだけでなく、お店の周辺環境を映す風景カットを入れると、お客様に「どんな場所にあるお店なのか」を伝えやすくなります。
商店街の中にあるのか、静かな住宅街にあるのか、駅からの道のりはどんな雰囲気かといった情報は、料理のアップだけでは伝わりません。
風景カットは、伝えたい印象を設計してから撮る
風景カットは、「なんとなくつなぎで撮っておく」ものではありません。
料理やスタッフを写した「メインのカット」の合間に挟む「Bロール」として使う場合でも、動画全体でどんな印象を伝えたいかを、先に考えておくことが大切です。
- 静かで落ち着いた雰囲気を伝えたいのか
- 元気で明るい雰囲気を伝えたいのか
- 特別感、非日常感を伝えたいのか
- 集中できる、落ち着いて過ごせる環境を伝えたいのか
伝えたい印象によって、必要になる映像は変わります。
たとえば、静かな雰囲気を伝えたいのであれば、動きの少ないゆったりとしたパンや、人通りの少ない時間帯の映像が合いますし、元気で明るい雰囲気を伝えたいのであれば、活気のある時間帯や、テンポのある動きの映像が合います。
以前の記事で「構図は意図を実現する手段」だとお伝えしましたが、風景カットも同様に、先に伝えたい印象を決めてから、それに合う撮り方を選ぶという順番で考えるとよいでしょう。
撮影前に確認しておきたいこと:天気・時間帯
風景撮影では、天気や時間帯によって、撮れる映像が大きく変わります。
特に、夕焼けや朝焼けなど、限られた時間帯や条件でしか撮影できないカットもあります。
こうしたカットを狙う場合は、撮影日の天気予報や、日の出・日の入りの時刻を事前に調べておくことが欠かせません。
以前の記事で紹介したロケハンの際に、当日撮影したい時間帯に近いタイミングで下見をしておくと、実際の光の入り方を確認でき、当日の失敗を防ぎやすくなります。
撮影前に確認しておきたいこと:映り込みへの配慮
風景を撮影する際は、画面に何が映り込むかについても、事前の確認が必要です。
撮影する場所によっては、映してはいけないもの、映ると都合の悪いものが周囲にある場合があります。
- 他人の私有地や、無関係な第三者の看板・建物
- 通行人の顔や、車のナンバープレートなど、個人が特定できてしまうもの
- 競合するお店や、意図せず映り込む著作物(アート作品など)
これらが画面に入っていないか、ロケハンの段階で確認しておきましょう。
撮影中も、フレームに入る範囲を都度確認する習慣をつけておくと安心です。
風景撮影ならではの構図のポイント
風景を撮影する際は、以前の記事で紹介した基本を組み合わせて考えます。
- 地平線や水平線は、画面の真ん中ではなく、三分割法の線に合わせると、広がりのある構図になりやすいとされています
- 手前から奥まで広い範囲にピントを合わせたい場合は、F8以上の絞った値がよく使われる目安です
印象を実現する手段としての「動き」
伝えたい印象が決まったら、それを実現する手段の1つとして、カメラワークがあります。
人物や料理と異なり、風景には「これ」という1つの被写体があるわけではなく、画面全体に情報が広がっています。
そのため、止まったカメラでただ映しているだけだと、単調で退屈な印象になりやすいという特徴があります。
以前の記事で、パンは被写体を画面の端に置くと広がりを、ティルトは中央に置くとスケール感を強調できるとお伝えしました。
風景撮影で伝えたいのは、まさにこの「広がり」や「スケール感」であることが多いため、パン・ティルトは風景撮影と特に相性の良い技法だといえます。
動きにムラがあると違和感が目立ちやすいため、三脚の雲台や、以前の記事で紹介したジンバルを使うと、より滑らかな動きになりやすいとされています。
番外編:空撮(ドローン撮影)について
ここまで紹介した内容は、地上での撮影を前提としたものです。
3分程度のお店紹介動画であれば、ここまでの内容で十分に対応できます。
一方、上空からの視点で、周辺一帯の広がりを伝える「空撮(ドローン撮影)」という選択肢もあります。
今回のようなお店紹介動画では必須ではありませんが、興味のある方向けに、基本的な考え方とルールを紹介しておきます。
ドローンの飛行には、航空法によるルールがあります。
2026年9月時点で確認できた内容では、次のような規制があります。
- 重量100g以上のドローンは、国土交通省への機体登録が義務付けられています。100g未満は「模型航空機」として扱われ、国の資格や機体登録は不要な場合がありますが、別の法律や条例が適用されることがあります
- 空港周辺、地表から150m以上の高さ、人口集中地区(DID)の上空、夜間飛行、目視外飛行、人や物件からおおむね30m未満に近づく飛行では、国土交通大臣の許可・承認が必要です
- 2026年7月には、小型無人機等飛行禁止法が改正され、国会議事堂・内閣総理大臣官邸・皇居・大使館・自衛隊施設・原子力発電所といった「重要施設」周辺の飛行禁止範囲が、従来の約300mから約1,000mに拡大されました。この規制は、あくまでこうした特定の重要施設の周辺が対象であり、一般的な店舗や住宅街に一律で適用されるものではありません
このように、ドローンの飛行ルールは細かく定められており、改正されることもあります。
実際に飛行させる場合は、この記事の内容だけで判断せず、国土交通省の公式サイトなどで、その時点の最新情報を必ず確認してください。
この記事の内容は法律の専門的な助言ではなく、基本的な考え方の紹介にとどまります。
お店紹介動画の例で考えると
これまでの記事で例に挙げている、飲食店の3分程度のお店紹介動画で考えてみます。
まず、動画全体でどんな印象を伝えたいかを決めます。
たとえば「落ち着いて食事を楽しめるお店」という印象を伝えたいのであれば、人通りの少ない時間帯に、ゆったりとしたパンで外観や周辺の通りを撮影します。
撮影日は、事前に天気予報を確認し、狙いたい時間帯の光(開店前の柔らかい光など)に合わせてロケハンをしておくと安心です。
あわせて、背景に他店の看板や、通行人の顔が映り込んでいないかも確認しておきます。
こうした風景カットは、料理やスタッフのコメントの合間に短く挟むだけでも、動画全体の雰囲気作りに役立ちます。
まとめ
風景カットは、お店のロケーションを伝えるだけでなく、雰囲気やブランディングを演出するBロールとしても活用できます。
「静かで落ち着いている」「元気で明るい」など、伝えたい印象を先に決め、それを実現する手段として、構図や動き(パン・ティルト)を選ぶという順番で考えることが大切です。
天気や時間帯は事前に確認し、映り込んではいけないものが無いかもロケハンの段階でチェックしておきましょう。
空撮は必須ではありませんが、興味があれば選択肢として検討できます。ただし航空法のルールがあるため、飛行前に必ず最新の公式情報を確認してください。