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オーディオ処理完全ガイド:音量・ノイズ・ミックス
9月 11, 2026 ・ 映像制作
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オーディオ処理完全ガイド:音量・ノイズ・ミックス

ナレーション、BGM、効果音といった複数の音を重ねる場面では、それぞれの音量バランスと、プラットフォームごとの音量基準を理解しておかないと、聞き取りにくい、あるいは不快な音声になってしまいます。
この記事では、各音声要素の適正な音量差、YouTubeなどのラウドネス基準、発生源別のノイズ除去、そして複数トラックをまとめるミックスの考え方を中心に解説します。
なお、マイクの選び方や、撮影現場でのノイズ対策、EQ・コンプレッサーの基本的な使い方については、「動画撮影での音声品質完全ガイド」、音量調整とBGMバランスの基本は「オーディオ調整:音声ボリュームとBGM」で解説しています。
この記事では、その先の「音量調整」と「複数トラックのミックス」に絞って掘り下げます。

音は目に見えない情報である

技術的な話に入る前に、音そのものが映像制作において持つ役割を整理しておきます。
音は、映像と違って目に見えない情報です。
どんな内容の映像かによって、きれいに整えられた音、生々しいリアルな音、あえての無音、効果音、BGM、環境音など、さまざまな種類の音の情報を映像に付加することで、映像の魅力を増幅させたり、感情表現を豊かにしたりする効果をもたらせます。
ここから紹介する音量調整やミックスの技術は、こうした音の情報を、狙った印象で視聴者に届けるための手段だと捉えてください。

音量バランスの調整:各要素の適正な音量差

ナレーション・BGM・効果音(SE)は、それぞれ役割が異なるため、同じ音量で鳴らすと聞き取りにくくなります。
各要素に適正な音量差をつけることが、快適な音声設計の土台になります。

実制作でどう使うか

  • ナレーション・セリフは-6〜-12dB程度を目安にする:映像の主役となる声は、もっとも音量が大きくなる瞬間でも0dBを超えない範囲で、-6〜-12dB程度に収めるのが基準です
  • BGMは声より約20dB下げる「20dBルール」:人が話している場面でのBGMは、-24〜-30dB程度、ナレーションよりおおよそ20dB下げるのが基本です。「音楽が鳴っているのはわかるが、言葉の邪魔を一切しない」ラインを狙います
  • 効果音(SE)は場面に応じて調整する:通常時は-12〜-20dB程度に抑え、強調したい瞬間だけ一時的に-5dB付近まで上げて、すぐ元の音量に戻すと、効果音が耳障りになりません
  • マスターの最大値はクリッピングを避けて設定する:全体を書き出す際は、最大音量(True Peak)を-1dBTP以内に抑えます。0dBを超えると、音が割れる「クリッピング」が発生します

プラットフォーム別のラウドネス基準(LUFS)

音量の「大きさ」は、単純な波形の高さだけでなく、人が実際に感じる音の大きさを表す「LUFS(ラウドネス値)」という指標でも管理されます。
配信先のプラットフォームによって、基準となるLUFS値が異なります。

実制作でどう使うか

  • YouTubeは-14LUFSが目安:YouTubeは公式に明言していないものの、業界内では-14LUFS(LKFS)が推奨値として広く認識されています。この値を超える音量の動画は、YouTube側で自動的に-14LUFS程度まで下げられます
  • 放送・配信サービスは基準が異なる:テレビ放送は-24LUFS、ニコニコ動画は-15LUFSが目安とされており、プラットフォームごとに最適な音量は異なります
  • 小さすぎる音声は補正されない:ラウドネス正規化は、基準値を超えた音量を下げる処理のため、逆に音量が小さすぎる動画は、そのまま小さいままになります。基準値ぎりぎりを狙うより、まず適正な音量で仕上げることが重要です
  • ラウドネスメーターで確認する:編集ソフトに搭載されているラウドネスメーターを使うと、書き出し前にLUFS値を数値で確認できます。感覚だけに頼らず、数値で最終チェックすることが実践的です

ノイズ除去と音質向上:発生源ごとの対処

撮影時にどれだけ対策していても、電源や環境に起因するノイズが録音に混入することがあります。
ノイズの種類によって、有効な除去方法は異なります。

実制作でどう使うか

  • ハムノイズ(電源由来の「ブーン」という音):コンセントや電源ユニット、周辺機器の電磁波が原因で発生する、低い唸り音です。50Hz/60Hzという電源周波数とその倍音を狙って除去する専用ツール(Sonnoxの「DE-BUZZER」など)や、多くの編集ソフトに搭載されているハムノイズ除去機能で対応します
  • クリックノイズ(「パチッ」という瞬間的な雑音):接触不良やケーブルのノイズなどで発生する、瞬間的な雑音です。Audacityなどのソフトに搭載されている専用の除去機能で、波形の異常な部分をピンポイントで修復できます
  • 発生源から対策するのが最優先:ノイズ発信源となる機器から距離を取る、電源ケーブルと信号ケーブルを分けて配置する、といった環境面での対策が、編集での除去よりも根本的な解決になります
  • 編集での除去は「救済策」と考える:ノイズ除去処理は、音質にある程度の影響を与えます。現場での対策を優先し、編集段階の処理は、それでも残ってしまったノイズへの救済策として位置づけます

オーディオミックス:複数トラックを重ねる考え方

ナレーション・BGM・効果音・環境音など、複数の音声トラックを1本の映像にまとめる作業がオーディオミックスです。

実制作でどう使うか

  • 優先順位を決めてから音量を調整する:一般的には、ナレーション・セリフを最優先とし、次に効果音、もっとも控えめにするのがBGMという優先順位で音量を決めていきます
  • ダッキングで自動的にバランスを取る:Premiere Proなどの編集ソフトには「オートダッキング」という機能があり、ナレーションが始まると自動でBGMの音量を下げ、終わると元に戻すという処理を自動化できます。手動でキーフレームを打つ手間を省けます
  • サイドチェインという仕組みも活用できる:ダッキングと似た考え方として、特定の音(ナレーションなど)の音量に合わせて、別の音(BGM)の音量を連動して下げる「サイドチェイン」という処理もあります。音楽制作の分野でよく使われる技術ですが、動画のBGM調整にも応用できます
  • トラックごとに役割を意識して配置する:ナレーション、BGM、効果音、環境音を、それぞれ別のトラックに分けて管理すると、あとからの音量調整がしやすくなります

視聴者が快適に聞ける音声設計

技術的な数値を守っていても、実際に視聴者が聞く環境を意識できていなければ、快適な音声にはなりません。

実制作でどう使うか

  • スマートフォンのスピーカーで実機確認する:多くの視聴者はスマートフォンのモノラルスピーカーで動画を見ています。ヘッドホンやモニタースピーカーだけで調整を終えず、スマートフォン単体の音で聞き取れるかを、必ず実機で確認します
  • 動画全体を通して音量を一定に保つ:シーンによって声の大きさやBGMの音量がバラバラだと、視聴者はそのたびに音量を調整する必要が生じ、ストレスになります。動画全体を通して、ラウドネスの水準を揃えることを意識します
  • 長時間の動画は聴き疲れに配慮する:講義やインタビューなど尺の長い動画では、過度な音圧やBGMの主張が、視聴者の聴き疲れにつながります。短尺のSNS動画とは異なる基準で、落ち着いた音量設計を心がけます

シーン別・オーディオミックスの組み立て方

企業紹介・会社PV:ナレーションを-6〜-12dB、BGMを20dBルールで下げて設定し、YouTubeの-14LUFSを目安に書き出し前にラウドネスメーターで確認します。

インタビュー・対談動画:BGMを控えめにするか無音にし、ナレーション(会話音声)の明瞭さを最優先します。ハムノイズが混入している場合は、専用ツールで除去してから音量調整に進みます。

SNS向けの短尺動画:スマートフォンでの視聴を前提に、実機確認を必ず行い、効果音を使ったメリハリのある音量設計で、テンポの良さを演出します。

まとめ

ナレーション・BGM・効果音には、それぞれ適正な音量差(ナレーション-6〜-12dB、BGMはそこから約20dB下げる)があり、これを守ることが聞き取りやすさの土台になります。
配信先によってLUFSの基準(YouTubeは-14LUFSが目安)が異なるため、書き出し前にラウドネスメーターで数値を確認することが欠かせません。
ハムノイズやクリックノイズは発生源に応じた対処が必要で、現場での対策を優先しつつ、編集段階の専用ツールを救済策として活用します。
そして、優先順位を意識したミックスとダッキングの活用、スマートフォンでの実機確認まで行うことが、視聴者にとって本当に快適な音声設計につながります。
目に見えない音という情報をどう組み合わせるかで、同じ映像でも伝わる魅力や感情の豊かさは大きく変わることを、忘れずにいてください。

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