
ソニーのAPS-C機を映像制作で比較:FX30・α6700・ZV-E10 II・α6400
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フルサイズのカメラは魅力的ですが、本体もレンズも大きく、価格も上がります。
そこで候補に挙がるのが、ひと回り小さなセンサーを積んだAPS-C機です。
この記事では、ソニー公式サイトの主な仕様をもとに、映像制作向けのCinema LineのFX30と、αシリーズのα6700・ZV-E10 II・α6400という、現行のAPS-C機4機種を映像制作の視点で比較します。
APS-Cを選ぶときに知っておきたいフルサイズとの違いから、記録性能、暗い場面への備え、手ブレ補正、音声と長時間の収録、撮影のしやすさまで、選ぶ前に確かめておきたい点を整理します。
APS-Cを選ぶ前に知っておきたい、フルサイズとの2つの違い

4機種を比べる前に、APS-Cというセンサーの大きさそのものが、映像にどう影響するかを押さえておきます。
1つ目は、同じレンズでも写る範囲が狭くなることです。
4機種のセンサーの横幅は約23.3〜23.5mmで、フルサイズ(約35.9mm)のおよそ3分の2です。
センサーが小さい分、同じレンズでも写る範囲が狭くなり、画角は焦点距離にしておよそ1.5倍相当になります。
たとえば24mmのレンズを付けると、フルサイズでの約36mm相当の画角になります。
狭い室内を広く見せたい撮影では、より広角のレンズが必要になるということです。
焦点距離と画角が映像の印象に与える影響は、以前の記事(「レンズの焦点距離と心理効果:構図への影響を完全解説」)で扱いました。
2つ目は、暗い場所での余裕です。
FX30・α6700・ZV-E10 IIの画素1つの幅を、公式の仕様の数値から計算すると約3.8μmで、フルサイズのα7 V(約5.1μm)より小さくなります。
暗い場所でピントを合わせられる下限(検出輝度範囲)も、FX30・α6700・ZV-E10 IIはEV-3、α6400はEV-2で、フルサイズのα7 VのEV-4には届きません。
暗い現場が多い場合にフルサイズのどの機種が向いているかは、以前の記事(「ソニーで暗い場所に強いカメラは?α7S III・FX3・ZV-E1を比較」)で扱いました。
逆に言えば、明るい場所での撮影が中心で、広角が必要な場面に備えてレンズを選べば、APS-C機でも映像制作の多くの場面に対応できます。
本体とレンズを小さく軽くできることは、APS-Cならではの大きな利点です。
4機種の立ち位置

- FX30:APS-Cの映像制作専用機:Cinema Lineに属する、動画撮影を主目的としたカメラです。冷却ファン、2つの基準感度(デュアル・ベースISO)、業務用マイク向けのXLRハンドルなど、長時間の収録を支える装備を持っています
- α6700:写真も動画もこなす万能機:ファインダー、ボディ内手ブレ補正、4K 120p、編集向けの高ビットレート記録までそろった、αシリーズのAPS-C上位機です
- ZV-E10 II:動画とVlogに特化した軽量機:ファインダーを省いて、バッテリーとメモリーカードを含む質量を約377gに抑えています
- α6400:ファインダー付きの小型機:ファインダーを備えた小型のボディですが、動画の記録形式や手ブレ補正は、ほかの3機種より控えめです
FX30・α6700・ZV-E10 IIの3機種は、静止画で約2600万画素の同じクラスのセンサーを搭載しています。
写る映像の基本的な性質は近く、違いはカメラの装備と形にあります。
違い1:動画の記録性能は、α6400だけ世代が違う

映像制作で最も大きな差が出るのが、動画の記録形式です。
- FX30:4Kで最大119.88pに対応し、編集向けの「XAVC S-I」形式では4K 59.94pで600Mbps、4:2:2 10bitで記録できます。ソニーは、6Kの情報量を凝縮して4K映像を作っていると説明しています。HDMI経由で、外部レコーダーへの16bitのRAW出力にも対応しています。4K 120pでは画角が約38%狭くなります
- α6700:FX30と同じく、4Kで最大119.88p、XAVC S-I形式の4K 59.94p・600Mbps・4:2:2 10bitに対応し、ソニーは「6Kオーバーサンプリング」による4K映像だと説明しています。4K 120pで画角が約38%狭くなる点も同じです。RAW出力には対応していません
- ZV-E10 II:4Kで最大59.94p、XAVC S-I形式の4K 59.94p・600Mbps・4:2:2 10bitに対応しています。ソニーは、4K 120pへのアップグレードが可能だとしています
- α6400:4Kは30pと24pまで、記録形式はXAVC Sで最大約100Mbpsです。主な仕様には10bit記録の項目がなく、HDMI出力も8bitと記載されています
8bitと10bitの違いは、色の階調をどれだけ細かく記録しているかの違いです。
10bitのほうが、編集で色を大きく変えたときに、空のグラデーションなどに段差(バンディング)が出にくくなります。
色補正やカラーグレーディングの考え方は、以前の記事(「カラーグレーディング実装ガイド:色補正から統一的な映像表現へ」)で扱いました。
実制作でどう使うか
- 色を作り込む制作なら、α6400以外の3機種:S-Log3などで撮影し、編集で色を作り込む場合は、10bitで記録できるFX30・α6700・ZV-E10 IIが前提になります。α6400もS-Log3を選べますが、10bitで記録できないため、色を大きく動かすと階調が崩れやすい点に注意が必要です
- 4K 120pのスローを多用するなら、画角の狭さを計算に入れる:FX30とα6700の4K 120pは約38%画角が狭くなるため、もともとのAPS-Cの1.5倍に重なって、かなり望遠寄りの画になります。スローで広い画を撮りたい場合は、超広角のレンズを用意するか、1080pの120pを選ぶ判断も必要です
違い2:暗い場面で差が出る「2つの基準感度」

同じクラスのセンサーを積むFX30・α6700・ZV-E10 IIの中で、暗い場面への備えに違いがあるのがFX30です。
ソニーは、FX30が「2つの基準ISO感度(ISO800とISO2500)に切り換えできるデュアル・ベースISO」に対応し、2つの感度のノイズレベルはほぼ同等だと説明しています。
ISO800では暗さが足りない場面で、ISOを少しずつ上げてノイズを増やすのではなく、ISO2500に切り替えることで、ノイズを抑えたまま明るさを確保できるということです。
α6700とZV-E10 IIの主な仕様には、このような2つの基準感度の記載はありません。
基準感度の考え方そのものは、以前の記事(「ISO感度の使い方:暗さを補正する際の注意点」)で紹介しました。
実制作でどう使うか
- 夕方から夜にかけての屋外や、照明が控えめな室内ではFX30が有利になる:APS-Cはフルサイズより暗い場所に余裕がない分、2つの基準感度を持つFX30の強みが効いてきます。暗い場面では「ISO800で足りなければ2500へ」と決めておくと、現場で迷いが減ります
違い3:手ブレ補正の仕組みが4機種で異なる

- FX30:センサーを動かして揺れを打ち消す、ボディ内の5軸手ブレ補正を備えています(静止画で5.5段、従来のCIPA規格、ピッチ・ヨー方向、Planar T* FE 50mm F1.4 ZA装着時)。動画では「アクティブ」モードも使えます
- α6700:同じくボディ内の5軸手ブレ補正を備えています(静止画で5.0段、従来のCIPA規格、ピッチ・ヨー方向、FE 50mm F1.2 GM装着時)。動画では「アクティブ」モードも使えます
- ZV-E10 II:ボディ内の手ブレ補正は備えておらず、動画撮影時に映像を電子的に補正する「アクティブ」モードに対応しています
- α6400:ボディ内の手ブレ補正はなく、主な仕様に動画用の補正モードの記載もありません。手ブレ補正機能付きのレンズを組み合わせる必要があります
FX30とα6700の段数は、測定に使ったレンズが異なるため、数字の差をそのまま性能差と読むことはできません。
電子式の補正は、映像の周辺を少し切り取って揺れを打ち消す仕組みのため、画角がやや狭くなるのが一般的です。
APS-Cの1.5倍に重なることも踏まえて、広角のレンズと組み合わせることを考えておく必要があります。
手ブレ補正の方式ごとの違いは、以前の記事(「手ぶれ補正システム完全比較:レンズ補正 vs 内部補正 vs ジンバル」)で詳しく扱いました。
実制作でどう使うか
- 手持ちで歩きながら撮るなら、ボディ内補正のあるFX30かα6700:ボディ内補正とアクティブモードを組み合わせられる2機種は、手持ちでの撮影に余裕があります。ZV-E10 IIやα6400で歩きながら撮る場合は、レンズの補正やジンバルとの併用を検討するのが現実的です
- 三脚に据えた撮影が中心なら、差は小さい:インタビューや商品紹介のように三脚に据えて撮る場合は、手ブレ補正の差が問題になる場面は限られます
違い4:音声と長時間の収録で、FX30が一歩抜ける

映像制作では、音声の確認、長時間の収録、記録の確実さが、撮影のしやすさを大きく左右します。
- ヘッドホン端子:FX30・α6700・ZV-E10 IIは、ヘッドホン端子を備えています。α6400はマイク端子のみで、ヘッドホン端子がありません
- 業務用マイク:FX30(型番ILME-FX30)には、業務用のマイクをつなげるXLR端子を備えた「XLRハンドルユニット」が同梱されています。ハンドルが付かない本体のみのモデル(ILME-FX30B)もあります
- 冷却ファン:FX30は冷却ファンを搭載し、4K 60pの長時間記録に配慮した設計だとソニーは説明しています。ほかの3機種の主な仕様に冷却ファンの記載はありません
- カードスロット:FX30は2つのスロットの両方がCFexpress Type AとSDカードに対応し、同時記録やリレー記録ができます。α6700・ZV-E10 II・α6400は、SDカード用のスロットが1つです
- タイムコード:FX30は、複数のカメラや録音機の時刻をそろえる「タイムコード」の入力に対応しています
- バッテリーの持ち(実動画撮影時、液晶モニター使用時):ZV-E10 IIが約130分、FX30が約115分、α6700が約100分、α6400が約75分です。α6400以外の3機種は、フルサイズのαと同じ大容量の「NP-FZ100」を使います
ヘッドホン端子がないと、撮影中に録れている音を耳で確かめることができません。
マイクの電池切れや、服がこすれる雑音に、撮り終わってから気づくことになりかねません。
撮影中に音声を確認する大切さは、以前の記事(「音声録音の準備:カメラマイク vs 外付けマイク vs 別録音」)で扱いました。
実制作でどう使うか
- セミナーや式典の長回しなら、FX30:1時間を超えて回し続ける収録では、熱による停止のリスク、カードのトラブル、音の失敗が重なると取り返しがつきません。冷却ファン、2枚への同時記録、XLRマイクを備えたFX30は、こうした現場に向いた装備がそろっています
- インタビューや対談なら、少なくともヘッドホン端子は必須:人の話を録る撮影では、音の失敗は撮り直しがききません。FX30・α6700・ZV-E10 IIのいずれかを選ぶのが安心です
- フルサイズのαと2台で撮るなら、バッテリーの共通化が効く:α6400以外の3機種は、α7 Vなどと同じNP-FZ100を使えるため、メインのフルサイズ機とサブのAPS-C機でバッテリーを共有できます
違い5:ファインダー・モニター・被写体認識・重さ

- ファインダー:α6700とα6400は約236万ドットの電子ビューファインダーを備えています。FX30とZV-E10 IIにはファインダーがありません
- 液晶モニター:FX30は約236万ドット、α6700とZV-E10 IIは約104万ドットで、いずれも横に開いて回転する構造です。α6400は上に約180度開くチルト式で、約92万ドットです
- 被写体認識(動画):α6700は人物・動物・鳥・昆虫・車・列車・飛行機を認識できます。FX30とZV-E10 IIは人物・動物・鳥です。α6400の主な仕様では、瞳AFの対象は人物と動物となっています
- 重さ(バッテリーとメモリーカードを含む):ZV-E10 IIが約377g、α6400が約403g、α6700が約493g、FX30が約646g(XLRハンドルを付けると約951g)です
α6400のチルト式モニターは、上に開いて自分を映すことはできますが、カメラの上にマイクを付けると、モニターと重なってしまう場合があります。
自分を撮りながらマイクも付けたい場合は、横に開くほかの3機種のほうが扱いやすいと考えられます。
4機種の選び方

FX30が向いていると考えられるケース:動画が仕事の中心で、セミナーや式典の長回し、業務用マイクを使った収録、複数台での撮影がある場合です。冷却ファン、2つの基準感度、2枚のカードへの同時記録、XLRハンドル、タイムコード、RAW出力と、APS-Cでありながら業務用の装備がそろっています。一方で、ファインダーがなく、写真を撮る道具としてはα6700ほど扱いやすくはありません。
α6700が向いていると考えられるケース:写真と動画の両方をこなしたい場合や、フルサイズ機のサブ機として使いたい場合です。10bit記録、4K 120p、ボディ内手ブレ補正、ヘッドホン端子、ファインダー、幅広い被写体認識がそろっており、写真も含めた万能さではもっとも弱点の少ない機種です。SLIPONでも、写真撮影の案件でα6700を使用しています(以前の記事「本日は写真撮影のお仕事でした。」)。
ZV-E10 IIが向いていると考えられるケース:自分を撮るVlogや、商品紹介の動画、SNS向けの動画が中心で、軽さとバッテリーの持ちを重視する場合です。10bit記録に対応しながら、約377gと4機種で最も軽く、バッテリーの持ちも最も長くなっています。ファインダーとボディ内手ブレ補正がない点は、用途に合わせて判断します。
α6400が向いていると考えられるケース:写真が中心で、動画は4K 30pで記録できれば十分という場合です。ファインダー付きのボディが小さく軽い点は魅力ですが、10bit記録に非対応、ヘッドホン端子なし、ボディ内手ブレ補正なしといった点から、映像制作を主な目的とするなら、ほかの3機種を優先して検討するのがよいと考えられます。
フルサイズを含めた現行機種の比較は、以前の記事(「ソニーのフルサイズミラーレス比較:α1 II・α7R VI・α7 V・α7C IIの選び方」)で扱いました。
まとめ
APS-C機は、同じレンズで画角が約1.5倍相当になり、暗い場所での余裕もフルサイズより小さくなります。
その一方で、本体とレンズを小さく軽くでき、明るい場所を中心とした撮影であれば、映像制作の多くの場面に対応できます。
4機種の中では、FX30が長時間の収録と業務用の装備を備えた映像制作専用機、α6700が写真も動画もこなす万能機、ZV-E10 IIが軽さとバッテリーの持ちを優先したVlog向けの機種、α6400が写真中心の小型機という位置づけです。
動画を仕事の中心にするならFX30、写真も同じくらい撮るならα6700というように、自分の撮影で何を優先するかを決めてから選ぶことが大切です。
参考にした情報
- ソニー「FX30 主な仕様」 https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/spec.html
- ソニー「FX30 特長:シネマの映像表現」 https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/feature_1.html
- ソニー「FX30 特長:プロに応える操作性」 https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/feature_4.html
- ソニー「FX30 特長:プロに応える信頼性」 https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/feature_5.html
- ソニー「α6700(ILCE-6700)主な仕様」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-6700/spec.html
- ソニー「α6700(ILCE-6700)商品情報」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-6700/
- ソニー「VLOGCAM ZV-E10 II(ZV-E10M2)主な仕様」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ZV-E10M2/spec.html
- ソニー「VLOGCAM ZV-E10 II(ZV-E10M2)商品情報」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ZV-E10M2/
- ソニー「α6400(ILCE-6400)主な仕様」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-6400/spec.html
- ソニー「α7 V(ILCE-7M5)主な仕様」 https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7M5/spec.html